要約: 分散型取引所は、暗号資産やトークンの売買をスマートコントラクトで自動化した仮想通貨取引所。現在主流となっている、流動性プールと呼ばれる預託金によって流動性を確保している自動マーケットメイカー(AMM)と、既存のオーダーブックモデル(CLOB)とに大別されます。
分散型取引所(DEX: Decentralized Exchanges)は、暗号資産やトークンの売買をスマートコントラクトで自動化した仮想通貨取引所です。
中央集権型の取引所は、TradFi(伝統的金融)でも仮想通貨市場でも、CLOB(Central Limit Order Book)と呼ばれる共通のモデルによって運営されています。このモデルは、買い手または売り手が注文を出して、他の誰かがその反対の売買注文を出すとその注文が実行される、という仕組みを採用しています。
この仕組みは、マーケットメイカー(特定の資産を大量に売買する市場参加者)か、それに代わる流動性提供者の存在がないとうまく機能しません。マーケットメイカーや流動性提供者、つまり、売ったり買ったりしてくれる大口の相手がいないと、注文の成立までに長い時間がかかってしまいます。
分散型取引所でこのモデルをそのまま採用するのは、現実的ではありません。
たとえば、現状のイーサリアムでCLOBを実装した場合、注文を出すだけでガス代がかかってしまいます。そして、そのほとんどの注文は約定しません。しかし、CLOBは大量の売買注文を必要とするモデルです。
「自動マーケットメイカー」モデル
2022年現在のDEXは、自動マーケットメイカー(AMM: Automated Market Makers)が主流となっています。
自動マーケットメイカーは、数式を用いて資産の価格を決定するモデルです。マーケットメイカーや流動性提供者の代わりに、流動性プールと呼ばれる預託金によって流動性が確保されています。マッチングエンジンは実装されておらず、管理者は存在しません。決済はオンチェーン(ブロックチェーンの内側)で行われます。
自動マーケットメイカーが主流になった要因は、LPトークン(Liquidity Providers Token)で流動性を提供して受動的な収入を得るしくみが、人気を博したことが関係しています。
LPトークンとは、自動マーケットメイカーモデルの分散型取引所に流動性を提供したことの「証明書」です。通貨としての価値はありませんが、流動性を提供して獲得した報酬を受け取る際、報酬との交換に使います。
「オーダーブック」モデル
そのほかに、リレイヤーと呼ばれる第三者がオーダーブックを管理する分散型取引所が存在します。
このモデルでは、注文を出すのはオフチェーン(ブロックチェーンの外側)、決済をオンチェーンで行うことによって、さきほど例に挙げた、注文を出すだけでガス代がかかってしまう問題を解決しています。中央集権型の取引所とは異なる仕組みですが、CLOBの一種と捉えることができます。
「高頻度バッチオークション」モデル
高頻度バッチオークション(FBA: Frequent Batch Auction)を導入した取引所インフラも登場しました。高頻度バッチオークションは、取引時間ごとに注文を取りまとめ、優先度に従って注文を処理する方式です。
バッチオークション(封印入札)とは、裁判所の不動産競売などで用いられる手法で、入札者がお互いに提示価格を知ることができない競売のことを言います。
AMMモデル: Uniswap、PancakeSwap、Raydium、Curve、Balancerなど
CLOBモデル: dYdX、Serum、MDEXなど
FBAモデル: Injectiveなど