要約: SFT(半代替性トークン)はERC-1155/3525規格で定義されるトークン。ERC-20の量的特徴と、ERC-721の質的属性の両方を合わせ持ちます。FT及びNFTと互換性があり、暗号資産として取引所への上場も、NFTマーケットプレイスへの出品も可能です。
半代替性トークン(SFT: Semi-Fungible Token)は、Ethereum標準のERC-1155、及びERC-3525規格で定義されるトークンです。ERC-20の量的特徴と、ERC-721の質的属性の両方を合わせ持っています。
ERC-20、ERC-721、ERC-1155、ERC-3525は次のように分類されます。
- FT (Fungible Token) : ERC-20
- NFT (Non-Fungible Token) : ERC-721
- SFT (Semi-Fungible Token) : ERC-1155、ERC-3525
それぞれの特徴は、FTは「値」を、NFTは「識別子」を、SFTは「値」と「識別子」の両方を持っていることです。Solv Protocolの共同創設者Yan Meng氏による以下の図から、これらの違いが読み取れます。
ERC-20で発行されたトークン(暗号資産)は、そのどれもが同じものです。誰かの持っているトークンと、別の誰かの持っているトークンの価値は常に等しくなります。つまり、代替可能ということです。そして、ERC-721のトークン(NFT)には、同じものが2つと存在しません。全てのトークンが異なる識別子を持つため、暗号資産のような、量という概念を持ちません。そのすべてが代替不可能な1点ものです。
ERC-1155とERC-3525は、値と識別子の両方を持ちます。FT、NFTと互換性があるため、暗号資産として取引所に上場することもできますし、NFTマーケットプレイスに出品することもできます。
ERC-1155 / ERC-3525の違い
ERC-1155とERC-3525の違いは、その仕組みの柔軟さにあります。ERC-1155は「値」と「識別子」が常に一致しているシンプルな構造をしていますが、ERC-3525では「値」と「識別子」を必ずしも一致させる必要がありません。そして、ERC-1155にできることは全て、ERC-3525で実行できます。
例えば、ERC-1155で発行された、限定100個の音楽SFTがあったとします。このとき、100個のSFTは全てがまったく同じものでなくてはなりません。すこしでも違うと、別のトークンとして扱われてしまいます。
ERC-1155で発行されたSFTの場合、著名人の所有したトークンも、楽曲を早期に発見して購入したトークンも、他の99個と区別されません。美術館に展示されたトークンも、最も再生数を稼いだトークンも、DJイベントで最も投げ銭をもらったトークンも、すべて同じものとして扱うことしかできないのです。それらを理由に特別な価値を付けることは、複数トークン間の違いを許容するERC-3525にしかできないことです。
ただし、これはERC-3525がERC-1155の完全上位互換である、という意味ではありません。
Solv ProtocolのYan Meng氏は、シンプルで扱いやすいことがERC-1155の利点だと話されています。また、すべてのSFTが同一であることを確実に証明できるのは、ERC-1155だとも仰られています。
Solv ProtocolがERC-3525を設計した当初の目標は、ポイント付き会員証、約束手形、債券、先物、オプション、投資ファンド、資産担保証券、土地権利書などの、現実世界の資産や請求書に対応する為だったとのことです。ERC-3525の登場によって、トケノミクスにさらなる可能性が生まれたことは間違いありません。
2022年9月、Solv Protocolによって提案されたEIP-3525が正式に承認され、ERC-3525となりました。