レポート

知っておきたい|DeFiに潜むリスクとその解説

DeFiは、TradFi(伝統的金融)に包含されるリスクの多くを取り除く代わりに、新たなリスクを生みました。

今日はDeFiを利用するうえで避けては通れない、各種リスクを解説していきます。

DeFiにどのようなリスクがあるのかを事前に把握しておけば、ご自身のリスク許容度に合った適切な投資を行うことができます。また、異変が生じたときに何が起こったのかを早期に察知できるようになります。

リスクに対して支払われる対価を意味する、リスクプレミアムという言葉を聞かれたことがあるかもしれません。リスクプレミアムは、リスクのある資産の期待収益率から、無リスク資産の収益率を引いた値のことです。具体的には、ある資産の期待収益率が8%で、無リスク資産の収益率(リスクフリーレート)が2%のとき、リスクプレミアムは6%です。

読みやすくするために、リスクは太文字にして、ユーザの取れる対策には赤線を引いたよ。

レイヤー0リスク

レイヤー0のリスクはDeFiを利用する投資家全員が負う、リターンの無いリスクです。

Proof of Stakeのチェーンの運用にはインターネットインフラが必要です。そのため、プロバイダーのサーバが落ちると暗号資産にアクセスできなくなり、最悪の場合資産が失われる危険があります。

暗号資産のエコシステムが崩壊した場合にも、それが資産の価値に影響を及ぼす可能性があります。これは、TerraエコシステムでステーブルコインUSTが基軸通貨の米ドルからデペッグした例が挙げられます。

そのほかに、ウォレットのハッキングやサービス停止が起きた場合の影響も看過できません。

レイヤー1リスク

チェーンインフラを利用してステーキングを行う際のリスクとして、スラッシングによる利益率の低下または元本割れが挙げられます。これを回避するためには、バリデータが常にオンラインでネットワークに接続し続けるなど、適正な管理が必要になります。デリゲータとして預託する際は、バリデータの選定が重要になります。

チェーン自体の機能不全による損失リスクも考えられます。これは、チェーン全体が長期間稼働を停止したり、バリデータが攻撃を受けて機能しなくなったりする場合です。また、暗号資産のハードフォークが生じて、新たなトークンが配布される際に価値の比率を1:1で受け取ることができない可能性も無いとは言えません。

エコシステムへの参加を奨励している、ローンチ直後のネットワークで利益を得る場合、エコシステムの機能不全で資産を失う可能性は高くなります。その際に、開発チームやガバナンス投票の決定次第では救済措置として資産を補填されることも考えられますが、それでも当初期待された収益を下回る可能性があります。

レイヤー2リスク

スマートコントラクトリスク

スマートコントラクトには、オラクルに関係するリスク、プロトコル開発者の信用リスク、バグ・ハッキング・誤動作などのリスクが潜んでいます。

オラクルのリスクは、誤動作による不正な清算プロトコルの悪用など、さまざまなものが考えられます。プロトコル開発者の信用リスクは、ラグプルリスクなどです。バグ・ハッキング・誤動作などのリスクは、未知の脆弱性や不具合によってDAppsが期待どおりに動作しなかったり、悪用されたりするケースです。

ラグプルを回避するためには、徹底したデューデリジェンスを行うことが重要です。コード、設計、ガバナンス、オラクルなどの問題に起因する経済的損失は、信頼できるチームが背後にいるプロトコルでも起きる可能性がありますが、InsurAce.ioNexus Mutualなどのスマートコントラクト保険によってカバーできます。

他に、持続可能なトケノミクス設計に失敗したプロダクトへ投資する危険があります。

ブリッジリスク

チェーンを繋ぐブリッジには、高いリスクが潜んでいます。

ハッキングされた事例が過去に何度もあるほか、例えば、Swim ProtocolHop Protocolのような流動性に基づいたブリッジにおいて、ラップトークンが流動性のないチェーンに滞留してしまう可能性があります。

ブリッジに関連するリスクは、たとえプロキシ(クライアントからサーバへのアクセス時にクライアントの代理を担う、セキュリティ強化などを目的としたシステム)を使っても現時点では回避が困難です。主要なDeFi保険プロトコルはブリッジに関する補償を制限しており、保険金が支払われない場合の多いのが実情です。

流動性マイニングリスク

流動性マイニングでは、LPトークン・ネイティブトークン間の価格差で損失が生じる可能性があります。基本的には1:1のレートで交換できる2つのトークンですが、必ずしも一致しているとは限りません。

また、流動性マイニングの仕組みの違いもリスクプレミアムに影響します。例えば、LidoのstETH(Lido Staked ETH)はEthereumのBeaconチェーンにステークされていて、The Mergeのローンチまで引き出すことができません。そのため、2022年9月11日時点では、stETHETHの市場価格に差があります。

市場リスク

リスクフリーレート

何を無リスク資産として扱うかによって、リスクフリーレートは変化します。伝統的金融においては通常、短期の米国債などが用いられますが、クリプトでは稀にそうでない場合もあるため注意が必要です。

例えば、BTCとETHを米国に見立てて、BTCマイナーの平均利回りやETHのステーキング利回りを短期の米国債、つまりリスクフリーレートとして扱い、主要なL1トークンを世界各国の法定通貨として見る向きもあるようです。その場合、L1トークンから得られる利回りは、各国通貨の短期国債として扱われます。

線形リスク

線形リスクとは、段階的に変化・展開していくリスクのことです。

スポット価格変動によって得られるリターンは、DeFiの典型的な収益源です。

流動性が不足している場合などは、証拠金取引の借り手の資金調達コストが高くなる可能性があります。

借入・貸出リスク

DeFiレンディングは、借入のためにそれ以上の担保を必要とし、借入・貸出期間を柔軟に変更できるプラットフォームが主流になっています。そのため、そこでは信用リスクとデュレーション(債券保有者が利子および元本を受け取るまでの期間を表す値で、小さいほど期間が短くなる)リスクを排除することが可能です。ただし、固定期間で長期に渡って貸出を行う場合にはデュレーションリスクが存在します。

DeFiレンディングでは、たとえガバナンストークンのステーカーによって貸し手が保護されたところで、プロトコル自体の破綻リスクを負うことは避けられません。

また、貸し倒れのリスク回避のために過剰な担保をプロトコルが要求する影響で、本来借りたい人が借りられないという根本的な問題も生じています。お金を借りたい人は、担保として預け入れる資産を持っていない場合が多いからです。

そして、現実資産に紐づけられた暗号資産以外のトークンは、まだ担保資産として預け入れることのできる段階に至っていません。AAVEのフラッシュローンなどで担保資産なしの借入が可能ではあるものの、借入と返済を1つのトランザクションで完結しなくてはならないため用途が限られています。

流動性の提供

流動性の提供者(LP: Liquidity Provider)は、DEXのプロトコルや市場リスクに常に晒されています。

LPの直面する最も一般的な市場リスクは、Impermanent Loss(IL)です。ILとは、流動性を提供する際に発生する損失です。流動性を提供した時点のトークン価格と、それを償還したときのトークン価格に差があった場合に、何もせずにホールドしていたときと比べて、資産価値が目減りしてしまう現象を言います。

プールに提供したトークンの価格が大きく変化するほど、ILは大きくなります。そして、流動性を提供した時点の価格に戻ると、損失はなくなります。償還するまで損失は確定されないため、回収するタイミング次第で損失を回避できます

非線形リスク

非線形リスクは、非連続に発生する、展開と規模を予測しにくいリスクです。

ボラティリティは非線形リスクの典型です。

その他のリスク

詐欺リスク

DeFiの詐欺はインターネット上に常に存在します。これもリターンの無いリスクです。

最も注意が必要なのがフィッシング詐欺で、詐欺師に騙されて秘密鍵を教えてしまったり、本物そっくりの詐欺サイトに資金を預けてしまうような例です。DeFiは中央集権型ではないため、いかにも公式のようなブロックチェーンアドレスや、それらしいウェブサイトを簡単に作れてしまうことは忘れないでください

資産を盗む意図がない限り、誰かが秘密鍵やシードフレーズを要求することは、絶対にありません。

フィッシング詐欺から身を守るためには、常に正しいURLにアクセスしているかを確認しなくてはいけませんブックマークから直接飛ぶか、SNSの公式アカウントをフォローして、そこから閲覧しましょう

知らないアドレスからのメールや、DM、SNSに貼られたリンクは、100%正しいと判断できるものでない限り注意が必要です。知らない間にウォレットに入っているコインやNFTも、触ってはいけません。悪意のあるGiveawayに一度引っかかると、リストに登録されて、今後延々と詐欺の標的になる可能性があります。

本記事の内容はTreehouse Financeの文献 “Deconstructing DeFi Returns: Harvesting Risk Premia” を簡略化したものです。Treehouse Financeは、DeFiのデータ分析・リスク管理支援ツールを提供している企業です。Binance、Bybit、Lightspeed、Jump Capital、Wintermuteなど、DeFi及びTradFiの多くの機関投資家から支援されています。