レポート

【解説】デジタル資産の権利章典

おはようございます。フェネックです。

Atlantic CouncilのGeoEconomics Centerのブログに2021年10月1日、社長兼CEOのMichael Greenwaldさんがデジタル資産の権利章典(A Digital Asset Bill of Rights)について寄稿されました。

記事に書かれた英銀・カナダ銀行の前総裁Mark Carneyさんの発言のとおり、ステーブルコインとCBDCsとの境界は現段階では不明確です。

デジタル資産の権利章典は、デジタル資産の定義の曖昧な部分や、そこに付随する権利を明確に策定するための国際的な試みです。

なんだかちょっと難しいけれど、みんなに関係があることだよ〜。読んでみると、将来のことが何となく見えると思うよ。

デジタル資産の権利章典

G7によって作られた権利章典の雛形は次のようなものです。

わかりやすくするためにすこし意訳していますので、詳しくは原文をご参照ください。

  1. デジタル資産による社会への弊害(マネーロンダリングなど)から切り離された状態を維持する権利
    金融活動作業部会
    (FATF)をモデルにしたデジタル資産の雛形作成を含む。
  2. 放置される権利(プライバシー)
    消費者の機密情報を保護するための保護手段作成を含む。
  3. アクセスする権利
    金融包摂(すべての消費者が低料金の金融サービスにアクセスするための支援)の優先順位付けを含む。
  4. コンピュータの適切な衛生管理とサイバー攻撃からの保護について情報を得る権利
    違法行為者
    デジタル資産を利用してランサムウェアを展開する場合の、国家安全保障上の事例に対処するための官民の連携を含む。
  5. 教育を受ける権利
    学校、産業界、非営利団体のデジタル資産に関する教育キャンペーンが対象に含まれ、イノベーションのポケットを増やすことができる。
  6. 基準を設定する権利
    志を同じくする国々(米国、欧州連合、ニュージーランド、日本、オーストラリア)の中央銀行総裁ワーキンググループを設立し、デジタル資産のブレトンウッズを作成することを含む。

FATFはマネーロンダリングやテロリストへの資金供給を防ぐ国際組織です。G7を含む国と地域が参加して、各国の取組みを相互審査しています。

「ブレトンウッズ」は、第二次世界大戦後に米国のブレトンウッズで開かれた連合国通貨金融会議を指しています。「USドル基軸の固定為替相場制」と、貨幣価値を貴金属の金に裏付ける「金本位制」の導入がこの会議で決定されて、その後の世界経済の安定に繋がったそうです。

Atlantic Council

Atlantic Councilはワシントンに本社を置く、国際安全保障と世界経済繁栄に関する運営をおこなう米国のシンクタンクです。

大西洋条約協会(Atlantic Treaty Association)のメンバーでもあるAtlantic Councilは、北大西洋条約に基づく自由民主主義保護の理念に準じてNATO(北大西洋条約機構)を支援しています。

GeoEconomics Centerはその一部門で、世界経済形成のための経済・金融・外交政策を行っています。

GeoEconomics Centerは、ハーバード大学のベルファー科学国際問題研究所と共同開発したCBDC Trackerを、2020年5月にリリースした実績もあります。

あとがき

米国が権利章典を先導しようとする背景には、中国の近年のデジタル分野の躍進があります。

G7メンバー(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)の作成したこの雛形は、各国の利用する平等な指針でもあり、一強国のイニシアチブによる不当なルール蔓延の予防策でもあります。

今回の権利章典はあくまでも雛形で、今後状況に合わせて臨機応変に変えていくとのことです。

これからのことを、ちょっとだけ気にしてみてね〜。

ブロックチェーンについて学ぶための知識を、下の記事にまとめています。

コトノカアカデミーでは、ブロックチェーンを全く知らない方でも一から学習していただけるよう、専門用語をなるべく使わず、わかりやすい内容を心がけています。