レポート

【投資戦略】仮想通貨銘柄選びとリスク回避のノウハウ

仮想通貨は長期投資向きのアセットです。ISO 20022関連の銘柄は特にです。

どんな銘柄に、どんな方法で投資するのか、その基本戦略を今日はご提案します。

具体的な銘柄名は出さずに、主観をなるべく排してお伝えしていこうと思います。仮想通貨に投資されていない方にも伝わるように、頑張って説明していきます。

ISO 20022銘柄に投資する目線でお話しするけれど、一般的な仮想通貨投資の話として聞いてくれれば大丈夫だよ。

長期目線で投資は気長に

ブロックチェーンは成長産業です。

そして、ブロックチェーンはインターネットと並ぶか、それ以上の技術的革新と言われるほどイノベーティブな技術です。実際、ブロックチェーンはインターネットの構造的欠陥を、本来あるべき姿に戻す鍵とも言えます。

2021年11月出版の株式会社グローバルインフォメーションのレポート「Blockchain Market with COVID-19 Impact Analysis (ブロックチェーンの世界市場・COVID-19の影響)」によると、ブロックチェーンの市場規模は世界全体で、2020年の30億米ドルから2025年には397億米ドルに拡大すると予測されています。

レポート内の文章「The platform segment is expected to witness high adoption during the forecast period (プラットフォーム分野は、予測期間中に高い普及率を示すと予想される)」は、つまり、レイヤー1のプラットフォームが2026年までに多くの企業で採用されるだろう、という予想です。

このレポートでは、IBM、AWS、SAP、INTEL、ORACLE、HUAWEI、ACCENTURE、WIPRO、BITFURY、CHAIN、BLOCKCYPHER、GUARDTIMEが主要企業として扱われています。勘のいいかたはこの顔ぶれを見て、ISO 20022/TC307が関係していることをすぐにお察しになられたことと思います。

ブロックチェーンネットワークの通信機能は、階層(レイヤー)構造になっています。レイヤー1、というのはネットワークの基盤となるブロックチェーン及びその階層のことです。レイヤー2は、レイヤー1の補助として機能します。

仮想通貨はボラティリティが激しくハイレバレッジの商品も多いため、過剰に投機の対象とされがちですが、それは仮想通貨の一分野、一側面に過ぎません。元を辿れば長期投資向きのアセットです。

こちらは2017年1月から2022年8月までの、仮想通貨市場全体の時価総額のチャートです。

仮想通貨グローバルチャート(総時価総額) from CoinMarketCap

このチャートから、市場全体の時価総額が長期的に右肩上がりであることが見て取れます。

ご参考までに、同期間のEthereumのユーザ数ドル建ての価格チャートを並べてみます。

Ethereumネットワークのアクティブアドレス数 from The Block
ETH/USD価格チャート from CoinMarketCap

画像では数字が見えていませんが、2017年1月時点の39万5,750人だったアクティブユーザ数が、2022年1月には1,605万人に増えています。直近5年間で、ユーザ数が40.6倍増加しました。

そして、Ethereumの価格は8.2米ドルから3769.7米ドルに上昇しました。5年後の同じ日に約460倍の価格で売買されているだなんて、2017年当時誰が想像したでしょうか。ここでのポイントは、2021年のバブル崩壊後も、いまのところはそれ以前の平均価格を割ることなくチャートが推移している、というところです。高い変動リスクを見せつつも、長期的に価格が上昇を続けていることは誰の目にも明らかです。

銘柄選びはロジカルに

では、どのようなアセットを購入するのが良いのでしょう。

ISO 20022の関係するレイヤー1ブロックチェーンへの投資がおすすめだよ〜、というお話は前回のとおりです。その前提は変わりません。

投資戦略としては、通貨自体の価値上昇によるキャピタルゲイン狙いならレイヤー2、ステーキングやノード運用によるインカムゲインも確保したい場合はレイヤー1の仮想通貨を購入するのが基本路線だと思います。どちらが良い悪いではなく、投資の目的や目標によって使い分けるべきです。お気をつけいただきたいのは、レイヤー2ブロックチェーンの仮想通貨は、レイヤー1と比較してより高リスクのアセットであることです。

ではここで、銘柄選びの際のプロジェクトの評価基準の具体例をご紹介します。

1〜3の優先順位を付けています。

  1. 明確なビジョンのもと、資金が十分に確保されているか
  2. 信頼できる人物が働いているか
  3. ビジョンを実現する技術力があるか

まず、将来の明確なビジョンがあること。それと同時に、資金を十分に調達できていること。次に、信頼できる人物がそのプロジェクトを動かしていること。最後に、ビジョンを実現するための技術力を持つプロジェクトであることです。

資金があってもビジョンがなければプロジェクトは成功しません。逆に、ビジョンだけでは企業の体力が持ちません。そして、お金があれば優秀な人材を雇うことができます。良い人がいれば、良い技術が作れます。

いかがでしょう。これを聞いて、どのように感じられましたか?

実はこれ、私の意見ではありません。

Astar Networkの創業者兼Stake Technologies CEOの渡辺創太さんが、彼の言い回しをお借りすると「Polkadotという巨人の肩に乗る」ことを決定付けた判断基準です。

この基準はプロジェクト選びの成功例だと思います。再現性のあるところまで落とし込まれた、こうした起業家目線の発想は、投資対象を選ぶ際に応用できるはずです。

トーケノミクスも同様です。過去の成功例に学んで、将来を予測することがリターンに直結します。反対に、十分納得しないまま投資をすると、売ってはいけないタイミングで簡単に手放すことになります。何か絶対的なルールがあるわけではありません。自分なりの「良い企業」「良いトーケノミクス」を見つけてみましょう

トーケノミクス(Tokenomics): TokenとEconomicsを合わせた造語。ブロックチェーン技術を用いて発行したトークンによる経済、またはその設計を指します。ネットワーク運用、開発等のガバナンスもトーケノミクスに含まれます。

リスク資産なりの分散を

ブロックチェーンの世間一般への普及はまだ始まったばかりです。多くのひとにとって、ブロックチェーンは理解不能な呪文ですし、ビットコインは詐欺です。

投資家も下手をすると、ブロックチェーンと発明当時のカメラとの区別がつきません。間違って写り込むと魂を抜かれるので仮想通貨を売りますし、中央で写って早死にしないようにしながら仮想通貨を購入します。

そんな不思議技術の塊みたいな扱いを受けている仮想通貨への投資に、リスクがないわけがありません。JP Morganの偉いひとが「仮想通貨は詐欺だ」と言ったら、みんなそんな気がしてつい売り払ってしまいます。

2017年当時、JP Morganの現CEOジェームズ・ダイモン氏はこのほかにも「チューリップバブルよりも酷いことになる」「取引した社員はクビだ」などの発言をされていたそうです。そして、その前後の時期にJP Morganがビットコインのデリバティブ取引の提供を開始していたため、市場操作の嫌疑がかけられイギリスの企業に訴えられました。後に同氏は、「あの発言を悔やんでいる。ブロックチェーンは本物だ」と反省のコメントを述べられたそうです。

長期投資においては、さまざまなリスクへの対策が重要です。

投資に慣れていらっしゃる方はよくご存知のとおり、ここで言うリスクは「危険」ではなく「可能性」を意味しています。資産を形成するうえで、投資のさまざまなリスクを正しく理解しておくことが重要です。

価格変動リスク 投資対象の価格が上下する可能性のこと。
信用リスク 財政難や経営不振などを理由に、投資家から預かっていたお金(元本)や利息を、国や企業が返済する能力がなくなる可能性のこと。
流動性リスク 市場で商品を売りたいときに売ることができなかったり、希望する価格で売れなかったりする可能性のこと。
金利変動リスク 金利の変動によって、債券の市場価格が変動する可能性のこと。
為替変動リスク 異なる通貨の為替相場の動きにより、外貨や仮想通貨建ての円換算による商品価値が変動する可能性のこと。

上の表は投資全般に共通のものです。仮想通貨はこれらのほかに、取引所のハッキングや横領ブロックチェーン自体の脆弱性を突いた盗難仮想通貨のフォーク(分岐)などによる信用リスクや、秘密鍵の紛失ハードウェアウォレットの経年劣化による資産凍結などの資産管理リスクが挙げられます。リスクまみれですね。

なお、ハッキングの事例はrektが、DeFiの安全性はDeFi Safetyが参考になります。

高APYには注意が必要です。その利率がプログラムに組み込まれていない限り、運営はいつかその数字を下げます。そして、ステーキング、ファーミング、ノード運用で増えるのは資産額ではなく、あくまでもコインの枚数です。

長期投資は、「資産」「地域」「時間」の分散が基本です。インデックス投資のお話でよく出てくる、定番のあの手法です。せっかくなので、金融庁のサイトから画像を持ってきますね。

この浅く広くの投資は、リスクを下げる方法として非常に有効です。

仮想通貨のようなリスク資産を購入する場合は、そのぶん預貯金や国債といった安全資産でバランスを取るのが定石です。

すべての卵をひとつのバスケットに盛らないよう、教科書通りに株式や債権、不動産、コモディティに分散するのも良いと思いますし、iDeCo・積立NISAで上限いっぱいの全世界株とかでも良いと思います。貴金属もアンティークコインもありですし、全部金歯になった恋人をまだ好きでいてもらえるなら、それもたぶんありです。

ひとそれぞれ、許容できるリスクに応じて好きなように投資するのが一番です。

「資産」と「地域」の解像度を上げるのが、仮想通貨投資のコツです。具体的には、アセットのセクター(業種、時価総額、技術など)を分けたり、複数のステーブルコインを併用したり、異なる地域・プラットフォームの取引所・DEX・バリデータを利用したり、といった分散のさせかたをします。

これらが重要なのは、既存のアセット以上に多様性がみられるからです。

これまで不可能だったデジタルデータの価値の保存・移動がブロックチェーンによって実現したこと、そして、世界中のそういったサービスにDApp(分散型アプリケーション)を通じてユーザがアクセスできるようになったことで、新たな可能性・リスクが生まれました。その対策として、これまで以上の分散が必要なのです。

集中投資はあまりおすすめしません。学習コストが高くつきますし、短期投資並の集中力が日々必要になります。趣味や仕事で学習するのは良いと思うのですが、もし資産形成のために投資をしていて、勉強をしなくていいならそのほうがお得です。空いた時間を家族や友人と過ごして、趣味を満喫して、あと最近すごく暑いのでアイス食べて寝ましょう。

最後に、セクターローテーションという考え方をご紹介して終わろうと思います。

セクターローテーションとは、景気サイクルの変動とともに、現在投資しているセクターから別のセクターに資産をシフトさせることでアウトパフォーム(指標を上回る成果)を目指す戦略のことをいいます。景気サイクルが移り変わるときに、セクターごとのパフォーマンスが上下する傾向を利用した投資方法です。

サイクルごとに旬として扱われるセクターは、下の図のようなものです。

このセクターローテーションは、アメリカの投資家ジム・クレイマー氏がその有効性を認め、有名になった手法です。株式の長期投資によく用いられます。

セクターローテーションの効果を期待するのは、今の仮想通貨には時期尚早です。ただ、そういう考え方で動くひともいる、ということだけ知ってもらえればそれで良いです。ブロックチェーンの実用化の前例が増えて、仮想通貨全体の時価総額が今以上に上がったとき、その効果が発揮されるようになると思います。

仮想通貨は現在、アセットの個別購入が主流です。これを株で例えると、個別株に一点張りしているような状況です。そう考えると、リスクが高くなって当然ですよね。

将来、各セクターの仮想通貨のバスケット型商品で、今よりも低いボラティリティで投資できる日が来るかもしれません。それは、仮想通貨ETFかもしれませんし、STOかもしれません。もしそうなったときに、セクターローテーションという考え方を、ほんのすこし思い出してみてください。

ジム・クレイマー氏がビットコインを初めて購入したのは2020年12月。2021年6月の弱気相場の中、クレイマー氏は「ビットコインは構造的な理由で価格が上がらない」と言って保有しているビットコインをすべて売却します。その4ヶ月後、ビットコインは68,000ドル超えのAll Time Highを叩き出しました。

また、氏は「仮想通貨に価値などない」と断言した2ヶ月後、今度は人が変わったように彼がEthereum信者であると公言します。「35~40%の投資収益率を簡単に得られる」とまで熱弁したのち、ETHは62%下落しました。またある日、コインベース株が248ドルにまで落ち込んでいる事実に気づいたジムが、割安だと息巻いて周囲に購入を勧めると、50ドルまで下がりました。

ツイッター民は、そんな愛すべき人物をミーム化し、逆ジム・クレイマーETFというアカウントまで作られました。ジムおじさんと仮想通貨の愛憎劇は、今後も目が離せません。

仮想通貨銘柄の選びかたと、長期・分散投資のやりかたは以上だよ。最後までどうもありがとう〜! もしよかったら、Twitterをフォローしてくれると嬉しいよ。

下の記事では、おすすめの国内の仮想通貨取引所について解説しています。

低コストで投資できるか? どんなことが起きても資産を守ることができるか? に主眼を置いて、取引所や親会社の直近数年間の決算公告に目を通したり、企業の資産額をチェックして、経営状態、国内からの撤退や破綻のリスク、セキュリティ、ハッキング被害の補償などの情報をまとめました。

仮想通貨投資が初めてのかたでも、慣れていらっしゃるかたでもお役に立てて頂けるよう、一歩踏み込んだ内容まで言及しています。お金の出入り口を確実に確保するための参考にしてもらえると嬉しいです。