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Stake DAO|後編:Liquid Lockersの使い方

前編ではCurve Financeと「Curve Wars」の歴史を、中編ではLiquid Lockersの詳細をお伝えしました。

もし未チェックの方は、前編からご覧頂けますとより理解が深まると思います。

この後編では、Liquid Lockersの使い方をご説明していきます。

Liquid Lockersの使い方

1) 事前準備:トークンを購入

まずは、Stake DAOのDEXでトークンを購入します。もちろん、外部のDEXでも構いません。1inchなどのDEXアグリゲーターをご利用いただくのが、資金効率的にはベストだと思います。

購入するトークンは、SDT、任意のガバナンストークン、および流動性を提供したいトークンです。ガバナンストークンは、流動性を提供するプロトコルのものをお選びください。例えば、3pool(DAI+USDC+USDT)の流動性を提供したい場合、3poolはCurveのLPトークンなので購入するガバナンストークンはCRVです。

もし暗号資産投資に慣れていなくて、購入したトークンがウォレットに表示されなくてお困りの場合は、ウォレットの検索機能で見つけて追加するか、CoinMarketCapの各トークンのページなどから追加してください。

2) SDTをロック

SDTをロック、veSDTを受け取ることで、以下の効果が得られます。

  1. 各ガバナンストークンから得られる、すべての投票権をブーストする
  2. Liquid Lockersで対応している、すべてのプロトコルの利回りをブーストする
  3. Liquid Lockersのガバナンス投票への投票権を獲得する
  4. すべてのロッカー及びストラテジーから+10%のAPYを獲得する
  5. Stake DAOに利用者から支払われる手数料の5%を獲得する

トークンの購入が終わったら、次にLiquid LockersSDTをロックします。

トップページの「Boost your yield and power」からロックを実行できます。

「Amount」でロックするSDTの量を、「Duration」でロックが解除される日付を設定します。ここでロックする量が多く、期間が長いほど、SDTのロックによって獲得できるインセンティブが強まります。

ロック実行前に「Approve(承認)」を行う必要があります。承認にはガス代が必要です。

「Create Lock」を実行したら、SDTのロックは完了です。自動的にveSDTを受け取ります。

ロック量を増やす場合は、Lockタブで追加量を入力して「Increase lock amount」を実行、ロック期間を伸ばす場合はIncrease durationタブで日にちを設定して「Increase Lock Duration」を実行します。

3) sdTokenをステーク

任意のガバナンストークンをロック、sd○○○(sdToken)を受け取り、それを更にステークしてsd○○○-guageを獲得することで、対応プロトコルにおいて以下の効果が得られます。

  1. 投票権を獲得する
  2. ブーストされたAPRを獲得する
  3. 未使用の投票権を販売する権利を獲得する
  4. ロッカー&ストラテジー報酬として手数料の8%を獲得する

続いて任意のガバナンストークンをロック、受け取ったsdTokenをステークします。

こちらもトップページの「Convert your governance token」から実行できます。

SDT同様に「Approve」後、ロック量を入力して「Mint & Stake」を実行します。

ここではCRVの例をご紹介します。

画像では「STAKE」設定が”Off”になっていますが、これを”On”にするとロックとステークを同時に実行できるようになります。また、「GAS OPTIMIZED」を”On”にするとガス代を節約できます。「USE SDVECRV」はCRVの代わりにsdveCRVを使うための、veCurveVault利用者向けの機能です。

「Mint」か「Buy」かを選択できますが、受け取るsdCRVの量が多い方を選ぶのが良いかと思います。

ステークが完了したら、sdCRV-gaugeを自動的に獲得します。

ステークの解除は「Go to advanced page」のリンク先で実行できます。

sdCRVをCRVに戻すには、Curve FinanceのPoolで交換を行います。

Liquid Lockersトップページのリンクから、Curveに直接飛ぶことができます。

4) LPトークンをステーク

SDTをロックしてveSDTを獲得、さらにガバナンストークンをロック&sdTokenをステークしてsd○○○-guageを獲得した状態でLPトークンをステーキングすることで、流動性提供における利回りを最大限ブーストすることができます。

任意プロトコルのsdTokenを取得&ステークしたら、次は流動性の提供です。

トップページの「Stake protocol’s LP tokens」からLPトークンをステークできます。

LPトークンのステークには2通りの方法があります。sdCRV/CRVを例に挙げますと「Get sdCRVCRV-f」と「Zap CRV」です。ほとんどの場合は「Get」を使いますが、なかには「Zap」できるLPもあります。

「Get」する場合の手順

「Get sdCRVCRV-f」を利用する場合、まずはCRVとsdCRVからLPトークンを獲得します。

PancakeSwapなどと異なり、等価値の比率で入金する必要はありません。

「DEPOSIT SINGLE ASSET」を”On”にすると、CRV(ガバナンストークン)のみの入金でLPトークンを得られます。その場合、入金したCRVの半分がsdCRVのミント(鋳造)に利用されます。例えば、1 CRVを入力して入金実行したときに獲得するLPトークン量は「1 sdCRVCRV-f」(0.5 sdCRV + 0.5 CRV)です。※ガス代別

LPトークンを獲得したら、今度はそのトークンをステークします。

ステークするLPトークンの量を入力して「Deposit & stake」を実行したら、流動性提供は完了です。

流動性提供を解除する場合は、「Withdraw」タブでsdCRVを引き出します。

「Zap」する場合の手順

「Zap CRV」を行う場合、CRVの入金を行うだけで流動性提供が完了します。

入金してすぐにステーク開始するため、手動でステーキングする必要はありません。

「Zap CRV」は、入金したCRVの半分がsdCRVのミントに使われます。

流動性提供の解除手順は「Get」同様、「Withdraw」タブでsdCRVを引き出します。

5) 報酬を請求

獲得した報酬は、Claimタブで請求することができます。

ロッカー報酬、ストラテジー報酬、veSDT報酬、賄賂報酬・エアドロップに表示が分けられています。

「Claim lockers & strategies rewards」の「Extra actions」を”On”にすると、報酬で受け取ったSDTをそのままロックしたり、各種ガバナンストークンをLiquid Lockersにステークすることができます。

6) ガバナンス投票

Voteタブからガバナンス投票に参加できます。

投票には次のような種類があります。

  • Lockers Allocation / 各プロトコルの報酬の配分に関する投票
  • Strategies Allocation / 流動性提供による報酬の配分に関する投票
  • New gauge votes / 新規ゲージの追加提案への投票
  • SDT Governance / Stake DAOに関する提案への投票 (ガス代不要)
  • Meta-governance / 各プロトコルに関する提案への投票 (ガス代不要)

投票を行なっても、veSDTが消費される訳ではありません。報酬の配分の投票で再度同じゲージに投票する(Vote weightのパーセンテージを変更する)には、投票後10日間待つ必要があります。

保有しているveSDTは、各投票で別個に利用されます。ある投票で100%の投票権を使ったからといって、他の投票に参加できなくなることはありません。別の投票でも同じように100%の投票権を使うことができます。

「New gauge votes」では、2,500 veSDT以上を保有していれば投票を新規作成可能です。

Liquid Lockersプラットフォーム上のすべてのストラテジー(流動性)とロッカー(ガバナンストークン保管庫)は、独自のゲージを持つことができます。veSDTホルダーは、Lockers Allocation、Strategies Allocationから各ゲージに投票できます。つまり、ゲージが作成されることで、ユーザは報酬を増加させ、APYを高めることができるようになります。

7) その他

DAO management tasks

Harvest、Earnなどの、DAOの運営に参加して報酬を得ることができます。この機能は、DAOの分散化を促進し、オフチェーンの手動または自動化した作業を最小限に抑えるために設けられたものです。

ガス代でマイナス収支になる場合が多いので、ご利用の際は注意が必要です。

Boost calculator

Boost calculatorはブースト率の計算機です。このツールを利用することによって、sdTokenの投票力と報酬を最大限(2.5倍)ブーストさせるために必要なveSDTの量を、ユーザは正確に知ることができます。

こちらは、「Calculator」タブのグラフ表示です。

「Spider graph」タブのグラフ表示です。

Insurance(保険)

Liquid Lockersには、DeFi保険プロトコルSolaceの「ポートフォリオ保険」のSDKが統合されています。Solaceで保険(Policy)を1つ購入するだけで、220を超えるDeFiプロトコルのポジションが保証されます。

保証対象は、技術的リスク、スマートコントラクトのエクスプロイト(脆弱性を利用した攻撃)やハッキングです。これらには、鋳造の脆弱性、フラッシュローン攻撃、トロイの木馬(偽トークン)、プロキシ操作、演算エラー、リエントラント攻撃などが含まれます。詳細はSolaceの利用規約をご覧ください。

保険の購入は、画面右上の「Purchase Policy」から行えます。

支払いはUSDCで行います。「Approve」で使用を承認します。

続いて、カバーリミットを設定して保険を購入します。

購入すると、Liquid Lockersで保有しているすべての資産に保険が適用されます。

現在の保険の状態は「My current coverage policy」に表示されます。

ポリシーの非アクティブ化は画面右上の「Deactivate policy」から、資産の引き出しは「Withdraw funds」から行います。Cover limitの歯車マークからは、カバーリミットの変更を行うことができます。

ここまでの全操作にガス代がかかります。保険のご利用時はご注意ください。

Factory Pool

ゲージの存在する任意のCurveプールを、Factory画面で追加できるオプションです。

プールを追加すると、CRVとSDTによるブーストを利用できるようになります。

Bribes(賄賂)

Bribes画面では、現在賄賂が配布されているゲージを確認できます。ここに表示されている投票先に投票すると、各報酬額に応じた賄賂を受け取ることができます。賄賂の配布は隔週で行われます。

「Delegate your voting power」で各プロトコルへの投票をStake DAO(stakedao-lockers.eth)に委ねた場合、ユーザの保有するsdTokenに応じて最適な賄賂を自動的に獲得してくれます。

一度投票を委任すると、設定を解除するまでStake DAOは継続して活動を続けます。その間、手動の投票は無効となります。もし自力で投票したい場合は、委任を解除します。解除はいつでも実行可能です。

使い方の説明は以上だよ。お疲れさま〜。

あとがき

今日このお話をするきっかけをくださり、素人の私からの質問にもご丁寧にお答えくださったaesop@aesopfloppyさん(rekt共同創設者、Stake DAO所属)、本当にどうもありがとうございました。

果たしてこの文章にマーケティング効果があるのか自信がありませんが、Liquid Lockersの切り開いた可能性と魅力を知ることができて、とても有意義な時間でした。DeFiへの理解も深めることができました。

お話を聞いてくださった方のために簡単に経緯をご説明しますと、aesopさんからDMでLiquid Lockersの特集を組まないか? とお声を掛けていただいたのが最初です。突然ご連絡頂いたんですよね。rektは事件の都度チェックしていますし、Stake DAOも以前から知っていて興味があったので、すごくびっくりしました。

それで、Stake DAOの主力製品らしいLiquid Lockersについて調べてみると、なにやら凄い、というか群を抜いて素晴らしいプロダクトじゃないか、というわけで記事にしたのがおおよその流れです。

念の為断っておきますが、法定通貨も暗号資産も一切もらっていません(欲しい)ので、Stake DAOやLiquid Lockersの宣伝ではありません。本当に良いものだと感じたのでご紹介させて頂きました。

特にぐっときたポイントは、Curve Financeのコアチームの一員であるJulien Bouteloup氏の関わるプロダクトで、こうした製品が生み出されたという関係性でした。ここは非常に興味深かったです。問題意識を常に持っていなくては発明できない、Liquid Lockersのような製品に共感する人は多そうです。

今日のお話に登場した、Curve Finance発祥のveTokenモデルと、ConvexやStake DAOといったイールドアグリゲーターとの関係はめちゃくちゃ複雑です。それに、歴史を知らなくては製品を理解できませんし、使おうと思っても使い方がいまひとつわかりません。今日のお話を聞いただけで、一発で理解できる人がいるとは正直思えません。しかも、今日お話しした本筋の内容は、いまの時点で日本語の資料が一切ありません。

でもそれは逆に考えると、まだ参入者のほとんどいない未開の地ということでもあります。Liquid Lockersに個人投資家の稼ぐ余地はまだまだ残っています。ぜひとも、チャレンジしてみてください。

もしかすると、DeFiに対する規制を懸念されている方もいらっしゃるかもしれません。最後に、規制に関する私の質問に対しての、aesopさんのお返事をそのまま掲載させていただきます。

Q: Many people who are new to Stake DAO may be concerned about regulations. Regulations for DeFi are becoming stricter, do you have any measures to develop your business in the future?
(Stake DAOを初めて利用される方の中には、規制について心配される方も多いのではないでしょうか。DeFi規制の動きがこれまで以上に強まりつつありますが、今後ビジネスを展開する上で何か対策はありますか?)

A: Stake DAO is not a US based protocol, we are a decentralised platform, and although we are aware of the increasing regulatory stress that is being placed on DeFi in general, we are confident that we are doing what’s required to stay within all current guidelines.
(Stake DAOは米国ベースのプロトコルではなく、分散型プラットフォームですが、DeFi規制のストレスが一般的に高まっていることは認識しています。私たちは、現行のすべてのガイドラインの範囲内で必要なことを行っていると確信しています。)

この記事は投資のアドバイスではありません。ご自身でも一度調べてみてくださいね。

それじゃあまたね。最後までどうもありがとう!